護るべき者を失い、花々はただ途方に暮れる。
失意の底に落とされた彼らは、果たして何を想うのか。
花々を育む土壌もまた、導を失い、混迷を極める。
その先には、もう一筋の光も見えない。
それでも、彼女は云う。言葉ではなく、彼女の遺した全てが、そう伝えている。
立ち上がれ、暗闇の先にある未来に飛翔するために、と――
昇る太陽、巡る星々、廻る月。
人々の声が街に溢れ、明るい陽射しの元、一日が進んでいく。
そんな喧騒の中、私たちは再び立ち上がる。
彼女が愛した当たり前の光景を守り続けるために。
覚醒めぬ現実が街を彩り、また同じ一日が始まる。
けれど、私は知っている。
――もう間もなく、現実と、彼の者が目覚めることを。
歴史の一端を知り、花々はさらにそれを追う。
過去を知り、未来を向くことが、必要なことだと知っているから。
しかし、過去を追うのは、彼らだけではない。
過去を知り、力を求めんと欲するのは蛮徒たちの王。
未来へと飛翔するために、衝突は避けられない。
――この世に、互いが存在する限り。
未来へと向かう花々に立ちはだかる壁。
其は蛮徒たちの王にして、万の技、そして過去と未来を識る者。
花々はそれを越えんと欲し、この地に再び王が立つ。
姉の屍を越え、姉を偽り、それでも、花々を導かんとするために。
王女は未だ、幾千の嘘を重ねる。
――瞳に、本気の覚悟を携えて。
過去の先に見る一筋の光明。
それを手繰り寄せ、掴むために、花々は思考する。
そして同時に、花々は苦悩する。
地底で蠢く、晦冥の誘いに恐怖しながら。
策謀が巡り、数多の騎士が今蘇る。
――無数のいのちを、その糧として。
蘇った方舟と、数多の騎士。
方舟は空に座し、騎士たちは傍に侍る。
相対するは、焔の騎士。
己の内に眠る焔を揺らめかせ、方舟へと至る。
役者たちは方舟に揃い、戯曲は佳境へと向かっていく。
それぞれの思惑が交錯し――そして、決別の刻が訪れる。