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歪みの躙廻/舞台設定/街・遺跡など
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****目次 [#yfd0bc92] #contentsx **王都ディルクール [#v23dc41f] ***概要 [#s18bff30] 王都ディルクールは、魔動機文明時代よりフェンディル王国の首都として栄えています。また、ディルクールという首都の名前は魔法文明時代の前期フェンディル王国でも使われていたとの説もあります。ディルクールは今も魔術と芸術の都として知られていて、"魔動機院"を名乗る大規模なマギテック協会支部や、魔動機文明時代から運営されている国営美術館などの名所であふれています。 この都市は、広大な史跡の一部をそのまま利用しています。街路に敷かれた石畳は魔法文明時代のものであり、それを補強しているらしい魔力は、3000年以上経つ現在でも健在で、場所によっては【センス・マジック】などに反応します。そして、立ち並ぶ建物は、大半が魔動機文明時代のものを増改築したもので、3階建て以上の大型の建物が生前と並ぶ姿は訪れた者を驚かせます。建物の多くは、やわらかな暖色系のレンガや瓦が用いられており、優美かつ落ち着いた雰囲気を醸しだしています。彫刻やアーチも多様されていて、芸術都市の名に恥じません。 街を囲む高い外壁も古来より補修、改築を繰り返されたもので、魔法文明時代の彫刻や彫像の一部は今なお残っています。これらは歴史的にも美術的にも大変価値があるもので、他国からの研究者が足を運ぶことも珍しくありません。外壁には、当時、外敵から街を守っていた魔法結界の紋様も残っています。今は魔力を失っていますが、魔法陣を読み解くことで蛮族に対抗する手段――新たな〈守りの剣〉を製作する手掛かりになるかもしれないと、研究が続けられています。 ここディルクールを含む《遺跡と花の丘》一帯には、マナの働きで年中花が咲き乱れています。ディルクールは、"常春の街""花咲き乱れる都"などとも呼ばれていて、わざわざ観光客が訪れる程です。 この王都には現在3万人が住み、5本の〈守りの剣〉が人々の生活を守っています。 ***地理と気候 [#webd0421] 王都ディルクールの中心は、広大なフレーデ河を見下ろす大きな丘の斜面にあります。市街は下方へと広がり、フレーデ河を渡った先まで伸びています。中心地の高い家々の窓からは、ディルクール北部、ロシレッタとの実質的な国境となっているシャルレドの森まで見通すことができます。 ディルクールの平均気温はルキスラよりやや低め、加えて、オッド山脈から吹きおろす風の影響で、夏は過ごしやすく、冬は寒風が少々厳しいという気候になっています。年間通して降雨量は少なめですが、豊かな水をたたえるフレーデ河が潤沢な水を街に供給します。このフレーデ河は山の資源を街へ下ろす運河としても使われています。《血の禊事件》の発生までは、エレディア大三角州との交易などのために、上流下流双方へ運搬船が往来していました。 王都は交通の要衝でもあり、東にあるルキスラ帝国とは太い街道で繋がっています。南へは、《遺跡と花の丘》を迂回するようにして街道が伸び、さまざまなフェンディル地方都市とラインを結んでいます。この南街道は〈幻影騎士団〉がしっかりと目を光らせているため、極めて安全です。また民間で乗合馬車も運営されています。 その他、ディルクールから西へ延びる細い街道もあります。この街道は港町イビスを経由して、西方のリーンシェンク地方と繋がっています。 ***文化と風俗 [#c0432fc6] フェンディル王国は、魔法文明時代の頃から魔術と芸術を愛してきました。王都ディルクールは、その気質を顕著に表していて、街中には優美な彫像や、魔法のかけられた建造物が多くみられます。 魔動機院の熱心な働きのおかげで、ディルクールでは魔動機械も多く見かけられます。魔法の明かりを点す街灯が並ぶ通りを、魔動バイクに乗った人々が往来するのは、ディルクールの日常風景です。 芸術に造詣が深いため、ディルクールには芸術を司る妖精神アステリアの神殿があります。また、リルズ神発祥の地としても有名で、恋人たちの聖地として多くの若者が訪れる名所にもなっています。 ディルクールの主な収入源は、魔法技術を駆使した品々です。ジャーベル・ウォーキーの森で採れる大粒の魔晶石も、ディルクールを中心に売られています。周囲を取り巻く蛮族の脅威もあるこの国では、第一次産業よりも加工物での商業収入が大きな割合を占めます。昨今では、観光産業も無視できない収入源です。 このような華やかな国柄のおかげか、フェンディルの人々は皆、陽気で開放的な気質をしています。誰にでも気さくに話しかけ、特に来訪者には積極的です。フェンディルを訪れた女性の旅人は、例外なくフェンディルの男から声をかけられるというのは、ザルツ地方全域で有名な話です。 ただし、中にはスリなどの盗賊や、価値の無い品物を貴重品だと偽って売りつけてくる詐欺商人もいるので注意が必要です。商業がさかんなフェンディルは、世界でも珍しく国土全体に影響力を持つ盗賊ギルドがあります。このディルクールもまた盗賊ギルド〈花を摘む者〉の影響下にあり、そうした犯罪者たちも、ギルドの構成員です。 ***施設 [#be619f83] ****"白鳥の城"ルシーニュ [#oe210e7c] 双子姫が暮らす王城ルシーニュは、フレーデ河沿いにあります。白一色に塗られた城壁ゆえに"白鳥の城"とも呼ばれます。この城は魔動機文明時代に建設されたもので、優美な外観と堅牢な構造を両立させています。建築芸術において傑作であり、歴史的価値も高いこの王城は、防備の点でも非常に優れています。何重にも巡らされた城壁や、迷路状の内部構造など、侵入者を阻む仕掛けがいくつもあって、案内人がいなくては場内をまともに歩けません。 かつては大型砲台などの軍備設備も取り付けられていましたが、国が平和に導かれていくにつれて不要となり、城の美麗さを重んじて取り払われました。 ****魔動機院 [#b903f68d] ディルクールで王城の次に目立つ建造物は、多くの魔動機師たちが集う魔動機院です。 王城から程近い街の中央部にあるこの建物は、石のブロックをそのまま置いたかのような、直線だけで構成された素っ気ない無骨な建物です。このような外観になったのは《大破局》から復興の折、乏しい資材で作ったからだとされています。しかし、機能性を追求する魔動機師たちによる「ムダを省く」という無言の主張だとも言われています。 ここでは、主にディルクール近郊で発掘される魔動機械の研究、修復が行われています。近年では、魔動機師たちの活躍により小型飛行船の修復に成功しており、それを機に魔動機械研究の熱はますます上がる一方で、今は国内外問わず、優れた魔動機師が集まっています。最近では、ルキスラとの国交改善に伴い、互いの国へ留学する魔動機師たちも存在します。 少し前まで、魔動機院は学生や教授たち以外は立ち入り禁止の厳しい施設でした。しかし最近になって方針が変わり、今は一般市民に対して門戸が開かれ、研究風景の見学がしやすくなっています。また、神聖魔法とは違った形での治療――“魔動医療”と呼ばれる技術の研究も盛んになっており、魔動機院を診療所として、多くの人々の問診や治療も行われています。こうした背景には、副院長のテムズ・グラントの尽力があり、彼は今も公開講座の復活や、学院祭の開催の実現に力を注いでいます。 閉鎖的な空気がなくなりつつある今、教授たちも研究を進める中で他者の力を借りることにためらいがなくなったらしく、《遺跡と花の丘》に通う時には護衛として冒険者の力を求めることが多くなってきています。 また、錬金術の再発見もこの魔動機院の手柄であり、錬金術師たちの聖地のようになっています。 ****魔術師ギルド〈ミオソティスの根〉 [#z87371ad] フェンディル王国で忘れてはならない施設のひとつとして、魔術師ギルドがあります。今でこそ魔動機院が隆盛を誇っており、建造物としても魔動機院の方が大きく目立っていますが、前期フェンディル王国崩壊と共に一度失われた魔術を少しずつ再発見し、研究を重ね、フェンディルの発展を支えて来た魔術師ギルドの存在も忘れてはなりません。 ディルクールにある魔術師ギルドは〈ミオソティスの根〉と呼ばれており、元は公式に認められた名前ではなかったのですが、いつの間にかすっかり市民たちの間に広まり、ギルド側が公認し、正式な名称となりました。 魔術師ギルドというと、まず思い浮かぶのが閉鎖的なイメージですが、〈ミオソティスの根〉はそんなイメージを根本から覆します。 まずは、その外観。ギルドは、白を基調としており、流線型のシルエットがところどころに用いられている建造物で、至る所に細やかで芸術的な模様が刻まれています。ギルドの門から入り口に至るまでの道には、魔法文明時代のものと思われる魔術師の彫像が並び、その中には魔法王フェンディルの名が刻まれたものもあります。 実験のために用意された庭とは別に、所属する研究生や学生たちが休憩するための中庭も用意されています。また、ここは一般市民にも開放されており、魔術師たちと市民が語らう場にもなっています。そこからも分かるように〈ミオソティスの根〉は、広く門戸を開いており、一般市民の入門を歓迎しています。とはいえ、一時期無制限に入門させ、あまりに多くの者が道半ばで諦め、心を折られてしまったため、今は入門試験を設け、その門戸を制限しています。そうであっても、他の国の魔術師ギルドに比べれば、余程簡単に魔術を勉強することが出来る環境であることには変わりありません。そんな事情もあり、〈ミオソティスの根〉には、他国から留学にやってくる学生たちも数多く存在します。 ****フェンディル国営美術館 [#m0d747ac] 王城の南に位置する美術館もまた、ディルクールを代表する施設です。ここには建国当初から今日に至るまでのさまざまな美術・芸術品、文献、希少魔動機械が収蔵されています。一部の品はギャラリーで公開されていて、やはり旅人たちの観光名所として賑わっています。 美術館もまた魔動機文明時代に建てられたもので、壮麗な外観は王城と並んでディルクールの華やかさを凝縮したような美しさをたたえています。 この建物には、目に見える地上階だけでなく、広大な地下階も存在します。地下は、広く、複雑に入り組んだ多層構造になっており、迷宮と呼んで差し支えないほどです。この美術館の全体図も《大破局》の混乱の最中に失われてしまったため、現在では地下階の半分が調査されていない謎の区画状態です。そのため、地下深くに所蔵されている美術館や貴重な資料などは、ほとんど手付かずのままです。 区画調査は今でも続けられていますが、正しい順序で特定の本を引き抜くことで本棚が動いてようやく現れる隠し通路などがあって、なかなか思うようには進んでいません。また、資料を守ろうとする魔動機械と遭遇する危険もあり、冒険者などの腕に覚えのある者の同行が必須になっています。 ****給水塔と下水設備 [#ieb03b69] 都市の東部には、大きな給水塔があります。黒く滑らかな石材でできた円筒形のこの建物は、ディルクール内に残る貴重な古代魔法文明時代の建造物です。 この給水塔はフレーデ河の水を地下から汲み上げ、都市全体に水を供給する役目を担っています。塔から延びる水道管は、都市の重要施設や、街の至る所にある給水施設に繋がっていて、住民たちの生活を助けています。 給水塔は古代魔法文明時代から現在に至るまで一度も止まることなく稼働し続けていると言われています。塔では組み上げた水を浄化する魔法設備があるようで、人々のもとへ届く水はとても清潔です。研究者たちによって水を汲み上げる仕組みは解明されていますが、この浄化設備については未だ謎のままです。当然、メンテナンスなどを行う技術もないのですが、それでも給水塔は動き続けています。 また、給水塔にあった図面や文書には、ディルクールの地下には同じく魔法文明時代から可動し続けている下水設備もあると記されています。しかし、現在の人々はその下水処理施設がどこにあり、どのように動いているかは知りません。人々は、下水道がどのように張り巡らされ、最終的にどういった方法で汚水が処理され、何処へ流れていくのか知らないのです。もちろん、この謎を解こうとしている研究者たちは少なくありませんが、下水道にはガストやブロブ、時には魔神が潜んでいることから、調査は難航しています。 ****各種神殿 [#g90b50a4] ディルクールには、ライフォスやザイアなどの有名な神々の神殿は一通り揃っています。一番大きな規模を誇るのは、やはりライフォス神殿ですが、その他の神殿はそれほど大きな差はありません。古代神から小神までさまざまな神殿が信者たちへ門戸を開いています。 ディルクールは、融合神リルズの総本山があることでも有名です。リルズが生まれたとされるのは、《遺跡と花の丘》にある崩れた遺跡のひとつで、街から近く、信者たちがよく巡礼に訪れています。リルズの神殿は、ディルクールの郊外にあります。さして大きな神殿ではありませんが、傍にある美しい花園が人気の観光地で、旅人たちを集めています。また、融合神リルズの成り立ちから、最近では双子姫が手を取り合い国政に取り組む姿をリルクとリルニカになぞらえ、双子姫の共同即位を支持する信者も多く存在します。 ****冒険者の店〈花の導き亭〉 [#ybf1d532] ディルクールには複数の冒険者の店がありますが、中でもいちばん大きいのは、繁華街にある〈花の導き亭〉です。花束をあしらった店のエンブレムは有名で、隣国のルキスラやロシレッタ、遠くはダーレスブルグでも見かけられます。 〈花の導き亭〉もまた、魔動機文明時代からの遺跡を利用した建物で、3階建ての華やかな外観が目印になっています。食堂兼酒場として使われている1階が、冒険者たちの主な溜まり場です。依頼の話を聞ける店のカウンターはいくつも設置され、いつでも冒険者と店員が交渉しています。また、奥には店主の了承なしには入れない特別室があり、公にしにくい依頼の交渉が行われます。〈花の導き亭〉には、時折身分を隠した王族・貴族も依頼主として訪れます。特別室は、こうした依頼主の仕事を伝える時などに使われるのです。 建物の2,3階は、冒険者たちのためにある宿になっています。〈花の導き亭〉のベッドはやわらかく、綺麗な家具も備え付けられているため、とても人気があります。 ****冒険者の店〈明けの明星亭〉 [#u64e0cb9] 今回のキャンペーンにおいて、PCたちが所属する冒険者の店で、黎明の空に輝く星をモチーフにしたエンブレムを所属の証としています。 〈明けの明星亭〉の店主は、ママン・ブランシェと呼ばれる壮年の男性で、逞しい身体の大男ですが女性のような口調で喋るという変わった人間であるため、何も知らずに店を訪れた冒険者は扉をそっと閉めて帰ってしまうこともままあります。店主の人柄はよく、冒険者の店の主としての手腕も抜群なのですが、そんな事情があるためになかなか優秀な人材が集まりにくくなってしまっています。ママン・ブランシェはそれでもそのスタイルを貫く姿勢を変えるつもりはないらしく、中堅クラスの冒険者の店になるまでにはまだまだ時間が掛かるだろうと言われています。しかし、最近では何処からともなく現れた“流浪風”マシューという敏腕冒険者が〈明けの明星亭〉に籍を置き、“刀姫”と称され、近年頭角を現して来た剣士オルハもこの店に所属しているため、少しずつではありますが〈明けの明星亭〉の名はディルクールの市民たちに知られ始めてはいます。 **《遺跡と花の丘》 [#ked8d214] フェンディルの西一体には《遺跡と花の丘》があります。名前の通り、年中花が咲き乱れる魔法がかけられた遺跡群で、世界に類を見ないほど広大な面積を誇ります。 ここは魔法文明時代からフェンディルの都です。当時は西一帯すべてが都市だったわけではないようですが、花の魔法が掛けられた範囲を思うと、蛮族や魔物の脅威はない土地ではあったようです。 当時の都は魔法文明時代の終焉時に大部分が失われましたが、その後の魔動機文明時代に再興されました。現在の遺跡群の広さになるほど街が成長したのは、この頃のことだと考えられています。そして、《大破局》を経た今もその一部が復興され、王都ディルクールとして活用されています。ディルクールの近郊には、未だ当時の姿を残している建物も多く、魔物が出ない地域は観光名所にもなっています。 また、ここは魔法文明時代・魔動機文明時代の建造物の宝庫として、多くの研究者たちの興味を惹いています。国も、いつかは街として再興させたいと考えているようですが、今は文明復興のために研究を先行させていて、魔動機院の人間を始め、多くの人が研究に訪れています。 魔法文明時代の建物の多くは盗掘されてしまい、めぼしいものが発見できることは稀です。対して、魔動機文明時代に使われていたらしい建物からは、魔動機械等が発見される事例が多く報告されています。そのため、発掘は魔動機文明時代の建物を中心に行われています。しかし、それらも《大破局》による地殻変動を受けて、ほとんどが崩壊してしまっています。崩れた遺跡内の探索は多くの危険が待ち受けているため、探索を進めるには時間が掛かっています。
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****目次 [#yfd0bc92] #contentsx **王都ディルクール [#v23dc41f] ***概要 [#s18bff30] 王都ディルクールは、魔動機文明時代よりフェンディル王国の首都として栄えています。また、ディルクールという首都の名前は魔法文明時代の前期フェンディル王国でも使われていたとの説もあります。ディルクールは今も魔術と芸術の都として知られていて、"魔動機院"を名乗る大規模なマギテック協会支部や、魔動機文明時代から運営されている国営美術館などの名所であふれています。 この都市は、広大な史跡の一部をそのまま利用しています。街路に敷かれた石畳は魔法文明時代のものであり、それを補強しているらしい魔力は、3000年以上経つ現在でも健在で、場所によっては【センス・マジック】などに反応します。そして、立ち並ぶ建物は、大半が魔動機文明時代のものを増改築したもので、3階建て以上の大型の建物が生前と並ぶ姿は訪れた者を驚かせます。建物の多くは、やわらかな暖色系のレンガや瓦が用いられており、優美かつ落ち着いた雰囲気を醸しだしています。彫刻やアーチも多様されていて、芸術都市の名に恥じません。 街を囲む高い外壁も古来より補修、改築を繰り返されたもので、魔法文明時代の彫刻や彫像の一部は今なお残っています。これらは歴史的にも美術的にも大変価値があるもので、他国からの研究者が足を運ぶことも珍しくありません。外壁には、当時、外敵から街を守っていた魔法結界の紋様も残っています。今は魔力を失っていますが、魔法陣を読み解くことで蛮族に対抗する手段――新たな〈守りの剣〉を製作する手掛かりになるかもしれないと、研究が続けられています。 ここディルクールを含む《遺跡と花の丘》一帯には、マナの働きで年中花が咲き乱れています。ディルクールは、"常春の街""花咲き乱れる都"などとも呼ばれていて、わざわざ観光客が訪れる程です。 この王都には現在3万人が住み、5本の〈守りの剣〉が人々の生活を守っています。 ***地理と気候 [#webd0421] 王都ディルクールの中心は、広大なフレーデ河を見下ろす大きな丘の斜面にあります。市街は下方へと広がり、フレーデ河を渡った先まで伸びています。中心地の高い家々の窓からは、ディルクール北部、ロシレッタとの実質的な国境となっているシャルレドの森まで見通すことができます。 ディルクールの平均気温はルキスラよりやや低め、加えて、オッド山脈から吹きおろす風の影響で、夏は過ごしやすく、冬は寒風が少々厳しいという気候になっています。年間通して降雨量は少なめですが、豊かな水をたたえるフレーデ河が潤沢な水を街に供給します。このフレーデ河は山の資源を街へ下ろす運河としても使われています。《血の禊事件》の発生までは、エレディア大三角州との交易などのために、上流下流双方へ運搬船が往来していました。 王都は交通の要衝でもあり、東にあるルキスラ帝国とは太い街道で繋がっています。南へは、《遺跡と花の丘》を迂回するようにして街道が伸び、さまざまなフェンディル地方都市とラインを結んでいます。この南街道は〈幻影騎士団〉がしっかりと目を光らせているため、極めて安全です。また民間で乗合馬車も運営されています。 その他、ディルクールから西へ延びる細い街道もあります。この街道は港町イビスを経由して、西方のリーンシェンク地方と繋がっています。 ***文化と風俗 [#c0432fc6] フェンディル王国は、魔法文明時代の頃から魔術と芸術を愛してきました。王都ディルクールは、その気質を顕著に表していて、街中には優美な彫像や、魔法のかけられた建造物が多くみられます。 魔動機院の熱心な働きのおかげで、ディルクールでは魔動機械も多く見かけられます。魔法の明かりを点す街灯が並ぶ通りを、魔動バイクに乗った人々が往来するのは、ディルクールの日常風景です。 芸術に造詣が深いため、ディルクールには芸術を司る妖精神アステリアの神殿があります。また、リルズ神発祥の地としても有名で、恋人たちの聖地として多くの若者が訪れる名所にもなっています。 ディルクールの主な収入源は、魔法技術を駆使した品々です。ジャーベル・ウォーキーの森で採れる大粒の魔晶石も、ディルクールを中心に売られています。周囲を取り巻く蛮族の脅威もあるこの国では、第一次産業よりも加工物での商業収入が大きな割合を占めます。昨今では、観光産業も無視できない収入源です。 このような華やかな国柄のおかげか、フェンディルの人々は皆、陽気で開放的な気質をしています。誰にでも気さくに話しかけ、特に来訪者には積極的です。フェンディルを訪れた女性の旅人は、例外なくフェンディルの男から声をかけられるというのは、ザルツ地方全域で有名な話です。 ただし、中にはスリなどの盗賊や、価値の無い品物を貴重品だと偽って売りつけてくる詐欺商人もいるので注意が必要です。商業がさかんなフェンディルは、世界でも珍しく国土全体に影響力を持つ盗賊ギルドがあります。このディルクールもまた盗賊ギルド〈花を摘む者〉の影響下にあり、そうした犯罪者たちも、ギルドの構成員です。 ***施設 [#be619f83] ****"白鳥の城"ルシーニュ [#oe210e7c] 双子姫が暮らす王城ルシーニュは、フレーデ河沿いにあります。白一色に塗られた城壁ゆえに"白鳥の城"とも呼ばれます。この城は魔動機文明時代に建設されたもので、優美な外観と堅牢な構造を両立させています。建築芸術において傑作であり、歴史的価値も高いこの王城は、防備の点でも非常に優れています。何重にも巡らされた城壁や、迷路状の内部構造など、侵入者を阻む仕掛けがいくつもあって、案内人がいなくては場内をまともに歩けません。 かつては大型砲台などの軍備設備も取り付けられていましたが、国が平和に導かれていくにつれて不要となり、城の美麗さを重んじて取り払われました。 ****魔動機院 [#b903f68d] ディルクールで王城の次に目立つ建造物は、多くの魔動機師たちが集う魔動機院です。 王城から程近い街の中央部にあるこの建物は、石のブロックをそのまま置いたかのような、直線だけで構成された素っ気ない無骨な建物です。このような外観になったのは《大破局》から復興の折、乏しい資材で作ったからだとされています。しかし、機能性を追求する魔動機師たちによる「ムダを省く」という無言の主張だとも言われています。 ここでは、主にディルクール近郊で発掘される魔動機械の研究、修復が行われています。近年では、魔動機師たちの活躍により小型飛行船の修復に成功しており、それを機に魔動機械研究の熱はますます上がる一方で、今は国内外問わず、優れた魔動機師が集まっています。最近では、ルキスラとの国交改善に伴い、互いの国へ留学する魔動機師たちも存在します。 少し前まで、魔動機院は学生や教授たち以外は立ち入り禁止の厳しい施設でした。しかし最近になって方針が変わり、今は一般市民に対して門戸が開かれ、研究風景の見学がしやすくなっています。また、神聖魔法とは違った形での治療――“魔動医療”と呼ばれる技術の研究も盛んになっており、魔動機院を診療所として、多くの人々の問診や治療も行われています。こうした背景には、副院長のテムズ・グラントの尽力があり、彼は今も公開講座の復活や、学院祭の開催の実現に力を注いでいます。 閉鎖的な空気がなくなりつつある今、教授たちも研究を進める中で他者の力を借りることにためらいがなくなったらしく、《遺跡と花の丘》に通う時には護衛として冒険者の力を求めることが多くなってきています。 また、錬金術の再発見もこの魔動機院の手柄であり、錬金術師たちの聖地のようになっています。 ****魔術師ギルド〈ミオソティスの根〉 [#z87371ad] フェンディル王国で忘れてはならない施設のひとつとして、魔術師ギルドがあります。今でこそ魔動機院が隆盛を誇っており、建造物としても魔動機院の方が大きく目立っていますが、前期フェンディル王国崩壊と共に一度失われた魔術を少しずつ再発見し、研究を重ね、フェンディルの発展を支えて来た魔術師ギルドの存在も忘れてはなりません。 ディルクールにある魔術師ギルドは〈ミオソティスの根〉と呼ばれており、元は公式に認められた名前ではなかったのですが、いつの間にかすっかり市民たちの間に広まり、ギルド側が公認し、正式な名称となりました。 魔術師ギルドというと、まず思い浮かぶのが閉鎖的なイメージですが、〈ミオソティスの根〉はそんなイメージを根本から覆します。 まずは、その外観。ギルドは、白を基調としており、流線型のシルエットがところどころに用いられている建造物で、至る所に細やかで芸術的な模様が刻まれています。ギルドの門から入り口に至るまでの道には、魔法文明時代のものと思われる魔術師の彫像が並び、その中には魔法王フェンディルの名が刻まれたものもあります。 実験のために用意された庭とは別に、所属する研究生や学生たちが休憩するための中庭も用意されています。また、ここは一般市民にも開放されており、魔術師たちと市民が語らう場にもなっています。そこからも分かるように〈ミオソティスの根〉は、広く門戸を開いており、一般市民の入門を歓迎しています。とはいえ、一時期無制限に入門させ、あまりに多くの者が道半ばで諦め、心を折られてしまったため、今は入門試験を設け、その門戸を制限しています。そうであっても、他の国の魔術師ギルドに比べれば、余程簡単に魔術を勉強することが出来る環境であることには変わりありません。そんな事情もあり、〈ミオソティスの根〉には、他国から留学にやってくる学生たちも数多く存在します。 ****フェンディル国営美術館 [#m0d747ac] 王城の南に位置する美術館もまた、ディルクールを代表する施設です。ここには建国当初から今日に至るまでのさまざまな美術・芸術品、文献、希少魔動機械が収蔵されています。一部の品はギャラリーで公開されていて、やはり旅人たちの観光名所として賑わっています。 美術館もまた魔動機文明時代に建てられたもので、壮麗な外観は王城と並んでディルクールの華やかさを凝縮したような美しさをたたえています。 この建物には、目に見える地上階だけでなく、広大な地下階も存在します。地下は、広く、複雑に入り組んだ多層構造になっており、迷宮と呼んで差し支えないほどです。この美術館の全体図も《大破局》の混乱の最中に失われてしまったため、現在では地下階の半分が調査されていない謎の区画状態です。そのため、地下深くに所蔵されている美術館や貴重な資料などは、ほとんど手付かずのままです。 区画調査は今でも続けられていますが、正しい順序で特定の本を引き抜くことで本棚が動いてようやく現れる隠し通路などがあって、なかなか思うようには進んでいません。また、資料を守ろうとする魔動機械と遭遇する危険もあり、冒険者などの腕に覚えのある者の同行が必須になっています。 ****給水塔と下水設備 [#ieb03b69] 都市の東部には、大きな給水塔があります。黒く滑らかな石材でできた円筒形のこの建物は、ディルクール内に残る貴重な古代魔法文明時代の建造物です。 この給水塔はフレーデ河の水を地下から汲み上げ、都市全体に水を供給する役目を担っています。塔から延びる水道管は、都市の重要施設や、街の至る所にある給水施設に繋がっていて、住民たちの生活を助けています。 給水塔は古代魔法文明時代から現在に至るまで一度も止まることなく稼働し続けていると言われています。塔では組み上げた水を浄化する魔法設備があるようで、人々のもとへ届く水はとても清潔です。研究者たちによって水を汲み上げる仕組みは解明されていますが、この浄化設備については未だ謎のままです。当然、メンテナンスなどを行う技術もないのですが、それでも給水塔は動き続けています。 また、給水塔にあった図面や文書には、ディルクールの地下には同じく魔法文明時代から可動し続けている下水設備もあると記されています。しかし、現在の人々はその下水処理施設がどこにあり、どのように動いているかは知りません。人々は、下水道がどのように張り巡らされ、最終的にどういった方法で汚水が処理され、何処へ流れていくのか知らないのです。もちろん、この謎を解こうとしている研究者たちは少なくありませんが、下水道にはガストやブロブ、時には魔神が潜んでいることから、調査は難航しています。 ****各種神殿 [#g90b50a4] ディルクールには、ライフォスやザイアなどの有名な神々の神殿は一通り揃っています。一番大きな規模を誇るのは、やはりライフォス神殿ですが、その他の神殿はそれほど大きな差はありません。古代神から小神までさまざまな神殿が信者たちへ門戸を開いています。 ディルクールは、融合神リルズの総本山があることでも有名です。リルズが生まれたとされるのは、《遺跡と花の丘》にある崩れた遺跡のひとつで、街から近く、信者たちがよく巡礼に訪れています。リルズの神殿は、ディルクールの郊外にあります。さして大きな神殿ではありませんが、傍にある美しい花園が人気の観光地で、旅人たちを集めています。また、融合神リルズの成り立ちから、最近では双子姫が手を取り合い国政に取り組む姿をリルクとリルニカになぞらえ、双子姫の共同即位を支持する信者も多く存在します。 ****冒険者の店〈花の導き亭〉 [#ybf1d532] ディルクールには複数の冒険者の店がありますが、中でもいちばん大きいのは、繁華街にある〈花の導き亭〉です。花束をあしらった店のエンブレムは有名で、隣国のルキスラやロシレッタ、遠くはダーレスブルグでも見かけられます。 〈花の導き亭〉もまた、魔動機文明時代からの遺跡を利用した建物で、3階建ての華やかな外観が目印になっています。食堂兼酒場として使われている1階が、冒険者たちの主な溜まり場です。依頼の話を聞ける店のカウンターはいくつも設置され、いつでも冒険者と店員が交渉しています。また、奥には店主の了承なしには入れない特別室があり、公にしにくい依頼の交渉が行われます。〈花の導き亭〉には、時折身分を隠した王族・貴族も依頼主として訪れます。特別室は、こうした依頼主の仕事を伝える時などに使われるのです。 建物の2,3階は、冒険者たちのためにある宿になっています。〈花の導き亭〉のベッドはやわらかく、綺麗な家具も備え付けられているため、とても人気があります。 ****冒険者の店〈明けの明星亭〉 [#u64e0cb9] 今回のキャンペーンにおいて、PCたちが所属する冒険者の店で、黎明の空に輝く星をモチーフにしたエンブレムを所属の証としています。 〈明けの明星亭〉の店主は、ママン・ブランシェと呼ばれる壮年の男性で、逞しい身体の大男ですが女性のような口調で喋るという変わった人間であるため、何も知らずに店を訪れた冒険者は扉をそっと閉めて帰ってしまうこともままあります。店主の人柄はよく、冒険者の店の主としての手腕も抜群なのですが、そんな事情があるためになかなか優秀な人材が集まりにくくなってしまっています。ママン・ブランシェはそれでもそのスタイルを貫く姿勢を変えるつもりはないらしく、中堅クラスの冒険者の店になるまでにはまだまだ時間が掛かるだろうと言われています。しかし、最近では何処からともなく現れた“流浪風”マシューという敏腕冒険者が〈明けの明星亭〉に籍を置き、“刀姫”と称され、近年頭角を現して来た剣士オルハもこの店に所属しているため、少しずつではありますが〈明けの明星亭〉の名はディルクールの市民たちに知られ始めてはいます。 **《遺跡と花の丘》 [#ked8d214] フェンディルの西一体には《遺跡と花の丘》があります。名前の通り、年中花が咲き乱れる魔法がかけられた遺跡群で、世界に類を見ないほど広大な面積を誇ります。 ここは魔法文明時代からフェンディルの都です。当時は西一帯すべてが都市だったわけではないようですが、花の魔法が掛けられた範囲を思うと、蛮族や魔物の脅威はない土地ではあったようです。 当時の都は魔法文明時代の終焉時に大部分が失われましたが、その後の魔動機文明時代に再興されました。現在の遺跡群の広さになるほど街が成長したのは、この頃のことだと考えられています。そして、《大破局》を経た今もその一部が復興され、王都ディルクールとして活用されています。ディルクールの近郊には、未だ当時の姿を残している建物も多く、魔物が出ない地域は観光名所にもなっています。 また、ここは魔法文明時代・魔動機文明時代の建造物の宝庫として、多くの研究者たちの興味を惹いています。国も、いつかは街として再興させたいと考えているようですが、今は文明復興のために研究を先行させていて、魔動機院の人間を始め、多くの人が研究に訪れています。 魔法文明時代の建物の多くは盗掘されてしまい、めぼしいものが発見できることは稀です。対して、魔動機文明時代に使われていたらしい建物からは、魔動機械等が発見される事例が多く報告されています。そのため、発掘は魔動機文明時代の建物を中心に行われています。しかし、それらも《大破局》による地殻変動を受けて、ほとんどが崩壊してしまっています。崩れた遺跡内の探索は多くの危険が待ち受けているため、探索を進めるには時間が掛かっています。