巡る星々、沈みゆく月、昇る太陽。
朝を告げる鐘が鳴り響き、人々の声が街を包み始める。
そんな喧騒の中、私は目を覚まし、歩き出す。
幾度と無く繰り返される当たり前の日常へと向かって。
目覚めた現実は街を彩り、また同じ一日が始まる。
――願わくば、この穏やかな日々が、いつまでも続きますように。
歯車は、少しぎこちなく、けれど順調に馴染んでいく。
新しい生活は新鮮で、驚きと発見に溢れている。
失ってしまった空白が蘇るように埋まっていく。
私は、そんな幸せな時間を望み続けている。
けれど、万物は流転する。
悠久に思えるこの時間も、少しずつ移り変わっていく。
――この世界が、此処に存在する限り。
大地は、静かに佇み、万物を迎える。
水は、緩やかに流れ、万物を育む。
花は、大地に根付き、水を糧に生長する。
けれど、大地に生まれ落ちるのは、花だけではない。
育った花は、毒を生み、毒は大地に染み渡り、水を侵していく。
やがて毒は世界に溶け込み、花は毒を生み出した事を忘却する。
だが、決して忘れてはいけない。
――それはいつでも傍に在り、私たちの全てを蝕んでいることを。