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20131011_0

2013/10/11
SYSTEM
23:06:41
キルシー様が入室しました。
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23:11:59
 
23:12:01
 
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23:12:50

***王都ディルクール 住宅街***

23:14:53
様々な様相、高さの家が並ぶディルクールの住宅街。
23:15:31
日が高く昇っている時間なら多くの人々が行き交い、そこそこに栄えた通りだが、月明りが道を照らす今は通りそのものが眠ったように静か。
23:16:46
黒いコートを羽織った彼のブーツがコツ、コツ、と地面と擦れる音もよく聞こえることだろう。
23:18:33
夜の暗闇に馴染んだような格好でふらりふらりと歩く彼。その通りの交差点にある小さな花屋まで足を進めると、そこを左に曲がる。
23:18:51
そこからは先程までの通りよりもやや狭い道で、彼の足音は更に30mほど先まで続いた。
キルシー
23:19:46
「……」 やがてぴたりと足を止め、一つの建物の前に立つ。
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23:20:43
そうして彼が見上げたのは二階建ての家――とは言っても、その一階は居間があるように見えないような小洒落た外装をしている。
23:24:22
家の入り口扉の隣にはCafe〈紫苑亭〉と華やかな文字で描かれた看板が掛けてあるが、その看板は雨風に打たれて劣化し、どこか寂しげだ。
23:25:28
そしてその入り口扉にはclosedのプレートが掛かったままであった。
キルシー
23:26:49
「……」 中へ入ろうと扉を引けば、ギィと扉の軋む音が鳴る。
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23:27:20
パタン、と扉の音が閉まる。外からもそうであったように、中は照明など点いている筈もなく、薄らと月明りが照らしているだけだ。
23:28:14
店内はテーブルと椅子が綺麗に並べられているが、それにはいつから使われていないのだろうかという程に埃が積もっている。
23:28:30
彼はその間を縫うようにゆっくりと歩き、カウンター奥にある厨房へと足を踏み入れた。
23:29:14
そしてパチンと魔動機の照明を点ける。するとその厨房内はそこまでと違い、埃がまったく積もっていないのが分かる。むしろ丁寧に手入れされていた。
キルシー
23:33:40
「……始めるか」 彼はコートを脱いでそれを壁際に掛け、腕を捲った。
23:34:08

***〈紫苑亭〉厨房***

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23:35:05
シンク台の下に置いてある籠から彼はいくつかの果実と木の実を取り出した。
23:37:03
それは以前エレディア大三角州のエルフの集落を訪れた際に譲ってもらった真っ赤な林檎。そしてクルミだった。
23:38:47
彼は包丁を握ると、手馴れた手つきで林檎の皮を剥いていき、トン、トンと切り分けていく。クルミも手際よく殻を割り、適当なサイズにしていった。
23:41:03
そこから林檎、砂糖と水を加えて煮込む、予め用意していたパイ生地にクルミを埋め込んで包んでいく、などの作業を順にこなしていく。
23:41:58
×パイ生地 ○タルト生地
23:42:37
そしてそれらを合わせたものをオーブンに入れ、火をかけ始めた。
キルシー
23:43:59
「……ふう」 火を扱っていたりで、若干額に汗。それを腕で拭い、オーブン内の様子を伺いながらシンクにもたれかかる。
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23:45:37
後は焼き上がりを待つだけ。彼はその間、腕組みをしながらじっと何かを考えていた。
キルシー
23:48:05
「……エレディア大三角州、か」 まさかこんなに早く訪れるとは思っていなかった。“あの事件”で関わりがあった場所でもある。
23:49:50
「……」 大きく溜息が漏れる。彼女の一件で我を忘れ、すっかり失念していたのだった。折角、貴重な現場で当時の様子を探る機会だったかもしれないのに。
23:52:07
(あのエルフの女にも訊いておきたいところだが……) 被害者の可能性もある。直に訊いても避けられて答えてもらえない、となると面倒だ。
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23:54:04
やがて、厨房内に芳ばしい香りが漂い始める。彼はそれをスン、と鼻で確認しつつ、動かないまま。
キルシー
23:55:49
「……」 腕組みをしたまま下を向く。その彼女の一件でも一つ、引っ掛かり続けていることがあった。
23:56:40
眼を瞑り、あの時彼女が何気なく口にした言葉を頭の中で思い返す。
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23:57:04
――……助けたつもりが、また助けられてしまったみたいね
キルシー
23:58:46
(……“また”助けられた?一体何の事だったんだ) 彼女は確実にそう言った。それは揺るぎもない事実だが
2013/10/12
00:00:01
(俺はあの女を今まで助けたことなど……) 全く覚えにない。大体、出会ってまだひと月も経っていないというのに。
00:01:17
「……」 首を横に振る。あの場で訊けるような雰囲気でもなかったし、あの後も失念していた。機会を取り逃がしてしまった感じだ。
00:02:47
「……つくづく予定を狂わされているな」 ふう、と再び一息。考えていても答えは見つからないのは分かっているが、どうにも腑に落ちない。
00:03:07
「――っと」
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00:04:22
そうこうしているうちに芳ばしい香りに適度な焦げの香りが混じっていることに気がつき、彼はオーブンを止める。
00:05:51
オーブンから焼きあがったそれを取り出すと、食欲をそそる香りが厨房から店内へと広がっていく。
キルシー
00:10:30
「……どんなものか」 焼きあがったのはタルト。それに包丁を入れると、サクッと小気味の良い音。
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00:11:00
タルトに乗せた林檎ごと小さく切り分け、彼は一つそれを口に運ぶ。
キルシー
00:12:12
「……」 しばらくそれを口に含み 「……よし」 と満足げに頷くいた。
00:12:54
「中々の出来だ。これなら……喜んでくれる筈だ」 そう一人で納得すると、更に小さく切り分けた焼き立てのタルトを箱に包む。
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00:13:21
中身が崩れないように丁寧に包むと、彼はそれを袋に入れ、再び夜の街へと足を踏み出した。
00:13:50
 
00:13:56
 
00:14:09

***集合墓地***

00:14:42
彼がゆっくりとした足取りで町の外れへと出た時には、既に夜が明けようとしていた。
00:14:52
周囲は小鳥が囀り、爽やかな朝を迎えようとしているのだろうが、聊か風が冷たい。
キルシー
00:15:26
「……っ」 冷たい風が吹くと、少々身を屈ませる。
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00:16:41
というのも彼が羽織るコートの下、その身体にはいくつも打撲の痕があるからだ。
00:17:38
最近になってクリストファーに剣を教えて貰っているが、心得が全くないせいで痣をつくっていることが多い。
00:19:03
彼は手加減をしている筈だが、自分の迂闊な動きで増やしているところが多い。それを自覚しているだけに、打撲の痛みが身に沁みる。
00:20:04
そうして時々痛みを覚えつつ歩いていき、コートを風に揺らしながら、彼が辿り着いたのは町外れの集合墓地。
00:20:19
すっかり風化してしまった石もあれば、よく手入れされた石もある。中には間に合わせで木の杭を打ち込んだだけの雑な墓もあった。
00:20:30
彼が足を止めたのは、中でも相当に手入れがされた墓石の前だった。
キルシー
00:30:01
「――」 墓の前を見るなり 「……また、か」
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00:30:38
そこには、見慣れた知らない花が添えてあった。
00:31:43
というのも、その花を自分以外の誰が置いているか見たこともない。だから知らない花。
00:32:19
最初こそはその花が添えてあることに驚いたものの、もう何度も見続けて慣れてしまった。だから見慣れた花。
00:33:19
一度ぐらいはその花の持ち主を見てもいい筈なのだが、これまで何度墓参りに来ても会うことはなかった。
キルシー
00:34:42
「……」 誰だかはわからないが、それでもありがたいことには変わりない。その花に軽く会釈するように頭を下げた
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00:35:13
それからごそごそと、自分の荷物から先ほどの箱を取り出す。
キルシー
00:35:29
「……アメル、一週間ほど前にエルフの集落へ行って来たんだ」 墓の前で屈み、彼はそれに語り出す
00:35:51
「冒険者として二回目の仕事で……まぁ、あまり手掛りになることはなかったんだけど」
00:36:43
「その時に同行してた人が、毒にやられてね。薬草を採ってくることになったんだ」
00:38:09
「なんだか、アメルがやってたことを俺が継いだみたいだったよ」 ふ、と何処か可笑しそうに
00:39:27
「……それと、その時に集落で色々作物を貰ってきてさ」 小箱を墓の前に置き
00:40:36
「また、それらを使って新しいの焼いてみたんだ。クルミのリンゴタルト、って感じかな……結構良い感じに出来たから」
00:41:01
「また、味見しといてくれ」 そう言って立ち上がる
00:41:21
「……」 それから目を伏せて数秒の黙祷
00:41:37
「……それじゃ」 そして、また、とでも言うように踵を返す。
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00:41:51
集合墓地を出る時には、もう日は昇って朝を迎えていた。
00:42:12
あまり寝ていない彼はふらりふらりと歩きながら、再び冷ややかな風と共に街へと戻るのであった。
# 
00:42:19
 
00:42:20
 
SYSTEM
00:42:22
キルシー様が退室しました。
発言統計
その他(NPC)48回61.5%1936文字59.8%
キルシー30回38.5%1299文字40.2%
合計78回3235文字